徳大寺有恒さんが亡くなった
初めてその文章に触れたのは
ワシが15才のころだったと思う
ベストカー誌(当時はベストカーガイド)に連載「私のお気に入り」そして今も続く「俺と疾れ」を見つけてからだ
クルマとは
見ても乗ってもイジっても楽しいものだ
そこは少年だったワシも解っていたつもりだ
徳大寺さん(以下、徳さんとさせていただく)
により、加えてクルマの「読む楽しさ」「語る楽しさ」
を気づかされた
当時は子供で雑誌もそんなに買えないから
とにかく一冊のベストカーをむさぶるように読んだね
徳さんの文章の何を新鮮に感じたかというと
スペックや走行性に加えて
そのクルマが生まれた文化的背景やライフスタイル
にも言及していたことかな
クルマってただの耐久消費財ではないってことを訴えていた
そして今にして思うと、文章のリズムがとても良かったのだとも思う
思い入れ、独断タップリなのも面白かった
それだけに、ワシ的に「それ違うだろ」「矛盾してるだろ」と思うことも多々あった
「インプレッサをインプと略して言うのは嫌いだ」って言いながら、コンテッサをコンテって言ってたり(笑)
ベストカーに加え「NAVI」への寄稿も面白かったなぁ
NAVIトークもだけど
1989年だったかな、バブル絶頂期のクラウンやメルセデスと
それに群がる人々を揶揄した文章なんか痛快で最高だった
トヨタのワークスドライバーから、カー用品で財を成したが・・・程なく倒産
その頃の経験から「もう人を使うまい、人に使われまいと思った」とか好きなエピソードだな
多額の借金を背負いながら、不人気で値引の大きかったゴルフⅠを手に入れる
そのゴルフと当時の国産車の基本性能の差に衝撃を受け「間違いだらけのクルマ選び」の草稿を書き、作家として世に出るきっかけを得た
以後、VWゴルフに恩を感じ、新型が出るたび買い続けた・・・これも好きなエピソードだ
徳さんはバブル期に
日産のグループCカーやティレルのF1にも試乗している
作家としてもノリに乗っていた時期かもしれない
その当時の著作「ああ、人生 グランド・ツーリング」「ダンディー・トーク」とか、カッコイイんだ
でも後年の「ぶ男に生まれて」「僕の日本自動車史」とかも好きだな~何回も読んだ
舌鋒鋭い徳さんだけど、近年は「まるくなったなぁ」とも思ってたね
あれほど嫌いだった(?)ミニバンも褒めてたしね
結局、徳さんの何が好きだったのかというと
「文体」だったのだろうと思う
クルマのことが書いてあるので興味を持ったけど
そもそも文章自体が好きだった
時代とともに、徳さんの著作を30年以上読み続け、ワシもトシを取った
その歳月を「ひとまとめ」に記すことは難しい
そして30年以上の歳月で、意識せずともワシは氏からの影響を受けているだろうと思う
何より、もう新しい文章が読めないのが残念でならない・・・